じょごの気持ち
映画『駆込み女と駆出し男』を観た。二回目である。
最初に観たのは映画館で、すずおさんと付き合って数ヶ月の頃だったので、妻である女性の気持ちはなんとなく分かったような、分かっていないような、といった感じだった。ただ、映画のクオリティーの高さに面喰らって、とんでもない映画を観た、という印象は覚えていた。
最近ストリーミング配信で観れることが分かり、もう一度観たくなり、観たのである。
映画の感想は他のブログにたくさん書かれているのでそちらに任せるとして(いくつか読ませてもらったがどの感想も素晴らしく勉強になった)、じょごという女性の気持ちに感情移入したので、そのことだけ書き留めたいと思う。
じょごは額の傷を治療してくれた医者見習いの信次郎と恋に落ちる。信次郎は医者見習いでありながら戯作者も目指しており、信次郎は「一緒に(医学を学ぶため)長崎へ行こう」とじょごを誘う。じょごはこれ以上医学を学ばなくとも、充分医者としてやっていけることを確信しており、診療所を開きながら戯作を書くべきだと、半ば強引に信次郎に戯作者の道を進ませようと背中を押す。
きっと信次郎は強引にでも背中を押してもらえないと戯作者の道は進めなかっただろう。そして信次郎は本当は戯作を書きたい気持ちが強かったと見えるので、映画のエンディングの先もきっとハッピーエンドなのだと感じさせられた。
じょごはじょごで、信次郎が本当はしたいと思っていることをさせたい気持ちと、信次郎の書く戯作を読みたかった気持ちがあったのではないかと思う(なぜなら私がすずおさんにそう思っているから)。
信次郎とすずおさんが違うのは、書きたい気持ちがあるかないか、というところだ。すずおさん自身は「書きたいことは何もない」と言い、「執筆活動を始めると死にたくなると思うからもう勧めない方が良い」とまで言っていた。
嘘を言っているようには見えなかったけど、本当にそうなのだろうか。万が一、少しでも書きたい気持ちが出てきた時は、じょごのように強く背中を押せる妻でありたいと思う。ただ、しばらくは言うと嫌がられそうなので、黙っていることにする。
いつか、すずおさんの頭の中を垣間見るような文章を読んでみたいと思いながら。
本日の一曲